しっかり「つうつう」の家

















敷地周辺が開けていること、山裾であり人工物が少なく南側には自然が望めること、敷地標高が20mあり二階の窓からは町と海が望めること。周辺の環境条件にとても恵まれ、パッシブデザインを目指す上で設計しやすく、外部環境に開き自然の恵みを受けながら、厳しい暑さや寒さからは身を守る「閉ざす性能」を持つお家が完成しました。
計画スタートの段階でまず敷地周辺の現況を調査を行いました。その調査の中の1つに今回からサン・サーベイヤーというアプリを使用し太陽の軌道の確認をしました。その情報をスケッチアップ(3Dモデリングソフト)に落とし込み真夏・真冬の日射の検討を行いました。
ご希望の間取り(広さ、動線、部屋数、収納量)をクリアしながらお家の中の温度差を減らすためになるべくワンルームのような間取りを目指します。しかし、プライバシーを守る個室も必要なので家中の空気が淀みなく「つうつう」な状態にするため各個室の入口に開閉式の欄間を設け来客の際も開けっ放しにできるようにしました。
二階の廊下の床は一部はすのこ状になっており、すのこ廊下の対角の位置にリビング階段があることで上下階の空気を家の両端から「つうつう」にし温度差をなくす工夫をしています。また二階廊下の吹き抜けハイサイドライトは明かり取りの効果もありますが、もう1つの効果があります。それは開閉することでの「空気抜き」の効果です。初夏にはハイサイドライトを開けておくことで煙突効果で軽くなった暖かい空気が上へ上へ移動しハイサイドライトから抜け出る空気の設計もしています。
家の中がつうつうでは冷暖房が効きにくいのではないかと心配されますが、効率良く冷暖房を効かす為に断熱・気密性能を高めています。(Ua値=0.56(Q値=1.96)C値=0.7)また冷暖房を行う一般的な壁掛け式のルームエアコンも必要暖房能力をQ値(断熱性能)、C値(気密性能)、設定温度、この地域の最低温度から導き出し2つのエアコンを上下階の対角の位置に配置し家全体をマイルドに温めたり冷やしたりできるようにしています。
そこに住まう家族が安心して楽しく暮らすことができる家を目指し、間取りプラン、住宅性能、設備などを検討しましたが、やはり素材やデザインもおざなりにはできないと考えます。
2019年6月竣工 今治市菊間