パッシブとアクティブ(エアコンの決め方の話)


春です。暖かくなりました。菊間の桜のもキレイに咲きました。

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なぜか「キレイだな~!」と思った桜の木の下にはお墓や慰霊碑があるものです。その地に眠る魂がむにゃむにゃ・・・。

この暑くもなく、寒くもない中間季節は窓を開け放つととても気持ちいいものです。

季節のピークは過ぎましたが今回は「エアコンの選び方」をブログで紹介しようと思います。

みなさんはエアコンを購入したことありますか?
既存の住宅も新築も、アパートやマンションも近年では冷房だけでなく暖房にもエアコンが使用されるようになりたくさんの方が購入した経験があるのではないでしょうか。
ではその優秀なエアコンはどのように選んでいるのでしょう。

家電量販店のエアコン売り場でスタッフ説明を聞き、価格、メーカーやデザイン、部屋の大きさ(畳数)や自動お掃除機能などの付加機能などなど総合的に判断して購入しているのではないでしょうか。

これが一般的なエアコンの選び方だと思います。

でも、よくよく考えるとこの選び方って疑問に感じませんか・・・?

「既存の住宅も新築も、アパートやマンションも」すべて同じ条件でしょうか?温暖な地域と豪雪地域でエアコンの必要な能力の条件は同じでしょうか?

しっかりとした「エアコンの選び方」を家電量販店のスタッフは知っているのでしょうか?

もちろん僕も知らなかったのですが・・・(笑)

日本住環境株式会社の佐藤さんに教えてもらい「松尾式」と呼ばれる?呼んでいる?エアコンの選び方を勉強しました。

間違いだらけのエアコン選び 「過大能力」避ける常識 松尾和也 松尾設計室代表
(松尾氏による日経に寄稿されてエアコン選びの記事です)

記事の内容をまとめると、
・畳数表示は1964年に制定され55年前の「無断熱住宅」に合わせた表示から一度も変わっていない→住宅の性能もエアコンの性能も55年間でもちろんよくなり続けている
・独自のエアコン選びの概算式で計算すると現在の畳数表示と無断熱住宅の畳数がほぼ一致する→次世代省エネ基準の住宅では計算上6畳用エアコンで18畳に事足りる
・無駄なイニシャルコストと過大なランニングコスト、エネルギーが浪費されている

とのこと。(これは僕がざっくりまとめたものです。詳細を知りたい方は記事を読んでみてくださいね。)

では松尾式とはどのような式なのでしょう?それが以下の式です。(暖房における概算式です)

必要暖房能力=(Q値+C値/10)×その部屋の面積×(設定温度-その地域の年間最低温度)
Q値→熱損失係数(お家の断熱性能値)C値→隙間相当面積(お家の気密性能値)

この式にあてはめると既存・新築問わず、ある程度のエアコンの適正な大きさがわかるのです。
内部発熱(家電・照明・体温)までは含まれませんが、現在工事中の菊間の家を例に計算してみます。

Q値→2.03
C値→0.7(未測定ですが以前測ったお家と同じとして)
部屋の面積(家全体)→123㎡
設定温度→21℃
年間最低気温を1.7℃(気象庁過去の気象データより)

で計算すると・・・

必要暖房能力(定格暖房能力)が「4.9kW」となります。
4.9kWがどれぐらいの大きさなのか、エアコンメーカーのカタログで調べるとだいたい14畳用ぐらいの能力になります。

つまり、今どきの次世代省エネ基準(+気密性能)を満たしているお家の場合、家1軒まるまる14畳用のエアコン1台でまかなえるほどの能力はあるということになります。

しかし、14畳用のエアコン一台で間仕切りがある家中の隅々まで暖かくなるわけはありません。

そこで菊間の家でご提案したのは、間取りや建具で空気を対流させる工夫をしながら、リビング(1F)中央に10畳用1台、寝室(2F)に6畳用1台の合計2台で6.1kWのエアコンです。
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(菊間の家二階廊下に施された3つの工夫)

初めての提案なので、一応各個室にはエアコンの電源を設けてはいます(笑)

とここまで菊間の家を例にエアコン選びの話をしてきましたが性能と設備が重要なのでなく、人間側での工夫が大切だと思っています。

そう、ここからが本当に伝えたいこと。

高気密・高断熱・高性能住宅と数値や設備が注目されがちですが、その性能を理解し使いこなしメンテナンスをするのはそこに住まう家族です。

我々が目指すべき家は「冬暖かく、夏涼しい」性能・設備に頼る家ではなく、「冬寒くなく、夏暑くない」工夫のされたお家です。これは住宅における温熱環境研究の第一人者南雄三先生の言うところの生殺しの室内温度設定です。
南雄三著「もとめる断熱レベルとめざす省エネレベル」

寝起きに少し寒く感じる時は上に一枚羽織る。(その後室温はあがるから)夜TVを見ながらソファでくつろぐ時はひざかけをする。真夏に外から帰ってきたときは扇風機ですばやく熱を逃がすなど、エアコンの冷暖房設備のスイッチを押す前に人間側で工夫できるものがたくさんあります。

これらは我慢しながら慎ましい生活をしてくださいという話ではなく(我慢を強いる省エネは必要ありません)、人間側の工夫で十分な温熱環境を手に入れ、省エネで光熱費も浮かすことができます。そしてなにより設備に頼りすぎず快適を求めて行動するというのは人間が生活する上でとても大切なことではないかと考えるわけです。

「パッシブ」な建築と「アクティブ」な人間の関係性が大切なのです!!

と無理やりまとめてみました。

時代とそれぞれの家族にフィットする、バランスのとれたお家づくりをこれからも進めていきたいと思います!

おしまい

setchi
最近のハイスペックのエアコンはでかい~!


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